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みなさんこんにちは。
未来国会運営チームの山本です。

前回の歳出編に続いて、今回は歳入について書かせていただきます。

 

〜歳入編〜

 

歳入について見ましょう。
「所得税」「法人税」「消費税」「公債金」が大きく注目されます。
(公債金に関しては、歳出の「国債費」を参考にしていただきたいです)
それぞれの説明に入る前に、少しだけみなさんに伝えておきたいことがあります。

みなさんは課税の三原則をご存知でしょうか?

金融・経済用語辞典「課税の三原則とは」 

税金は強制力があるので、特定の人が得をしたり損をしたりするような税金を課すのは望ましくないということを述べています。三原則としては、「公平」「中立」「簡素」であることが望ましいと言われます。詳しくは、リンクを参照してもらいたいですが、要は「誰しもにある程度税金がかかって、特定の人が得したり損したりしないものであるべきだ。さらに、それは誰にでもわかり、余計なお金がかからないものであるべきだ」ということです。

国は、国民に対して一方的に税金をかけることができるということを忘れてはいけません。これは、もちろん未来国会の予算案でも一緒で、自分たちの周辺が得をするから、他の人たちは我慢してくださいというのは、どうなのでしょうか? ぜひ、皆さんで考えてみてください。

 

・所得税

 

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私たち学生に一番馴染みがないというか、あまり具体的な内容を知らないのが所得税かもしれないですね。実際のところ扶養控除があるため、所得税がかかっている学生は多くありませんから。

参考までにではありますが、「103万円、130万円の壁」について紹介をします。

@nifty 私のマネー術
『103万円の壁、130万円の壁って何? パートで働く前に知っておきたい税金の基礎知識』

さて、所得税について少し見ましょう。高校の時に習った人も多いと思いますが、所得税は累進課税となっていて、所得が多い人ほどたくさん税金を払うという制度になっています。

国税庁『No.2260 所得税の税率』

ここでは、所得税でよく問題になるトピック「クロヨン」「トーゴサンピン」について見ます。

税理士法人インテグリティ
『クロヨン(9:6:4)トーゴーサンピン(10:5:3:1)とは~税金の不公平~』

クロヨンは、業種別の所得捕捉率(税務署などがどれくらい所得を把握しているか)を表しています。
サラリーマン(給与所得)は9割、自営業は6割、農業や林業、水産業は4割という内訳になっています。
把握している所得に対して税金をかけますので、水平的公平性に反するのではないかといわれることもあります。

トーゴサンピンは、所得の大きさを10とし、そのうち何割を税務署などが把握しているかを表したものです。
サラリーマン(給与所得)は10割、自営業5割、農業や林業、水産業は3割、政治家は1割となっています。
このことからも、業種によって把握されている所得の額が違い、かかる所得税の額も変わっている可能性があるということがわかると思います。

この捕捉率の問題を打開すれば、所得税収は上がるかもしれません。現在、導入の準備が進められているマイナンバー制度ですが、銀行口座と紐づけることによって捕捉率をあげることができるかもしれないそうです。そうなれば所得税収を多く見込むことができるかもしれません。

所得税を多く取ることができるから、自分たちの政策ができると考えるばかりでなく、どこでその所得を再分配するのか、人々にどのようなメリットのある政策をできるのかという説明がしっかりできるとなお良いでしょう。

 

 

・法人税

 

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企業の活動を活発にさせたい!企業の誘致をしたい!と思うと、法人税に目が行くと思います。また、大企業から沢山税金を取ることができれば、予算組みが楽になるなあと考える人もいるでしょう。
ところで、日本の法人税率って世界的に見るとどうなのでしょう?

ここで二つのコラムを紹介します。

MFクラウド公式ブログ
『法人税減税の影響とは?日本の国際競争力と減税の関係』

東洋経済オンライン
『日本の法人税は、本当に重いのか?不明確な実効税率、実はアジア諸国より低い場合も』

上は、日本の実行税率は高いと述べており、下は実際の法人税負担率は低いと述べています。
このように、同じトピックについて別の見解のコラムを見てみると、法人税が本当に高いのか。法人税を下げることによって、どれだけ経済効果があるのかということを考えることができます。

企業からしてみれば、法人税が下がれば自分たちが自由に使うことができるお金が増えるわけなので、それを投資に使えばもっと活発な経営を行うことができるようになります。もっとも基本的なマクロ経済学のモデルでも投資が増えれば国のGDPをあげることができるとある程度説明することができます。
もし法人税を増税すれば、逆のことが言えるかもしれないですね。ただし、この点についてはさらに議論が必要になると思いますが。

高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門 政治経済 現代社会
『短期:最も単純なIS-LMモデル』

現状、「法人減税、消費増税」という言葉がよく新聞に載ったように、日本政府はどこかの税金を上げるなら、どこかを下げるという方針をとっているようです。これは、政府の方針として「税収中立」という考えがあるからだそうです。

日本経済新聞『経財相「税収中立、複数年度で」』

 

・消費税

 

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私たちの身近で税金といえば思いつきやすいのが消費税だと思います。
将来のことを考えれば消費税を一律に増税するのか、軽減税率を採用しつつ増税するのか、はたまた減税をするのか、ということを考えることができると思います。

そもそも消費税を増税する際にも、様々な意見がありました。
著名な経済学者や有識者、政治家が様々な議論を行っていたのを鮮明に覚えています。

消費税について考えるにあたって、みなさんに知っておいて欲しい項目に『軽減税率』があります。

 

まずみなさんは軽減税率という物をご存知ですか?
消費増税とセットになって議論をされることが多いトピックなのですが、あんまり詳しく知らないという人も中にはいらっしゃるのではないでしょうか?

コトバンク『軽減税率とは』

日用品や生活必需品(それって具体的になんやという話は今回は置いておきます)にかかる消費税(海外だと付加価値税)を減税するというものです。欧州ではすでに導入されている国もあります。メディアに取り上げられる時に、トピックとして「貧困層に対する消費税の逆進性の問題」が挙げられます。

課税を行う時に、時々目にする法則に「ラムゼーの逆弾力性ルール(ラムゼールール)」があります。このルールでは、「値段の変動によって需要量が変化しにくいものに税金をかけたほうが効率的に税金を集めることができる」ということを説明しています。まあ、そんなに細かい話をするつもりはないので、これくらいでラムゼールールについては説明を留めるのですが、じっくり考えてみると少し納得できるところもあるんですね。このルール。

日常品っていつも必ず買わなくてはならないですよね。例えば、トイレットペーパーとかそうですよね。どんなに値段が高くなっても買わなくてはならないです。その商品に税をかければ必ず税金を取ることができるので、効率的に回収できるというわけです。

ラムゼールールを初めて聞くと、「なんだよこのルール。すごい酷なこと言ってるな。」と感じるかもしれないです。こういう時に、「貧困層に対する消費税の逆進性の問題」を取り出して、逆進性の話をする場合があります。でも、消費税って本当に逆進性あるのでしょうか?最後に少し考えてみましょう。

 

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あなたがスーパーで買い物をするとします。所持金を1000円を持っていて、100円のパンを買う場合と、消費税がかかって108円(消費税8%)になったパンを買う場合を考えてみてください。150円のほうが、所持金に占める価格の割合が高いですよね。
では、所持金が10000円だったらどうでしょう?100円のパンを買う場合と108円のパンを買う場合を同様に考えます。同じように価格が上昇していますが、所持金に占める価格の割合はさほど増えていないですよね。ここで考えた所持金を仮に所得だと考えると、消費税はお金を持っていない人に対して逆進性があるといえるでしょう。

では次に、個人の生涯所得について考えてみましょう。ここでは、かなり単純なケースを想定することにします。消費税は8%、この時、2人の個人がいるとします。Aさんは生涯所得が、100万円。Bさんは生涯所得が1000万円とします。この時どちらも、同じように消費活動をするとします。生涯のうち、3/5を消費に回すと仮定すると、この時Aさんの生涯消費額は60万円となり、Bさんは600万円になります。この生涯消費額は、消費税分も含むと考えます。消費税がこの時、8%なので、Aさんが負担した額は、約4.5万円。Bさんが負担した額は、約45.5万円になります。もちろん、各年で考えれば消費額は変動するのですが、生涯で考えるとおおよそこのようになります。

このように見ると消費税は、所得税に代表されるように、「お金を持っている人からたくさん税金をいただく」というものです。このように考えると消費税は逆進性を持っていると言えるのでしょうか?
だから、所得税と消費税を増税すると両者とも累進性を持っていると考えることもできるので、お金持ちには大変な政策かもしれないですね。
そのように考えると安易な増税は考えものだと思いませんか?

大竹文雄・小原美紀(大阪大学)『消費税は本当に逆進的か』

国税庁『食料品等に対する軽減税率の導入問題』(少し文章量多め)

 

以上のように、平成27年予算案から税金の項目をピックアップし、それぞれについて見てきました。どの税金も課税する為には、ある程度議論がいるということが伝わっていれば幸いです。

予算案を作る時に大切なのは、課税してうまいこと帳尻を合わせた予算案を作ることではありません。どうしたら、循環してある程度の期間運用できる予算案を作ることができるのか、将来の世代への負担をどうやって減らすことができるのかということを考えておくことが重要になってくるのです。

市場の原理を使って運用できるシステムを作れば、無駄に税金を増やす必要はありません。環境やエネルギーの問題では、循環型社会というワードがよく使われますが、予算の世界でも「循環」はキーワードであることに間違いはありません。有限ではない資源をどのように分配していくのかということを考えておかなくてはならないですね。

 

ではみなさまのご健闘をお祈りしております。

 

参考:畑農鋭矢・林正義・吉田浩(2008)『財政学をつかむ』有斐閣

未来国会運営チーム
山本隼汰

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